透析治療(腎不全、尿毒症)

腎臓病・人工透析治療 専門外来

犬と猫の腎臓病・透析治療について

「諦めない選択肢を。35年の実績に基づく、体への負担が少ない「腹膜透析」

犬や猫が進行した腎臓病(慢性・急性腎不全)に陥り、体内に毒素が溜まる「尿毒症」を起こすと、激しい嘔吐やぐったりとするなどの強い苦痛を伴います。

一般的な動物病院では「これ以上の点滴は意味がない」と諦められてしまうケースも少なくありませんが、当院では「透析治療」という命を繋ぐ確かな選択肢をご用意しています。

当院の院長(島田)は、1991年の学部学生時代より、日本初となる動物の透析治療(血液透析および腹膜透析)の研究を行ってまいりました。「犬の実験的尿毒症における血液透析と腹膜透析の比較」というテーマで学会長賞を受賞して以来、35年以上にわたり数多くの動物たちの透析治療を行い、窮地にある命を救うお手伝いをしてきました。

当院が「麻酔・手術なしの腹膜透析」にこだわる理由

動物の透析には大きく分けて2つの方法がありますが、当院では犬猫の体への優しさを最優先に考え、**「独自の腹膜透析法」**を採用しています。

血液透析と腹膜透析の比較

治療法特徴と犬猫へのリスク当院の判断
血液透析
(機械による体外循環)
体の小さな犬猫にとって、重度の腎不全時の麻酔リスク、太い血管の確保、体外へ血を抜くことによる血圧・心臓への負担が非常に大きく、費用も極めて高額になります。獣医臨床においては**実質的ではない(リスクが高すぎる)**と判断しています。
腹膜透析
(お腹の膜を利用)
動物自身のお腹の膜(腹膜)を利用して毒素をろ過します。機械に通さないため、急激な血圧変化がなく体への負担が極めて少ないのが特徴です。当院ではこちらを採用し、十分な治療成果を上げています。

カテーテル常時装着も不要な「完全独自」のアプローチ

一般的な腹膜透析では、お腹にチューブ(カテーテル)を長期間埋め込む手術が必要ですが、当院の独自法では麻酔や手術は一切必要ありません。

カテーテルを常時装着しておく必要すら無いため、治療後の感染症リスクや生活への制限がなく、動物たちのQOL(生活の質)を極限まで守ることができます。

  • 特に猫ちゃんの場合: 透析治療によって一度腎機能のピンチ(急性増悪期など)を脱すると、その後は透析を行わなくても、良好な状態を長期間維持できるようになる子が数多くいらっしゃいます。

「正しいノウハウで行えば、数値は必ず下がる」という科学的真実

透析は、浸透圧と拡散の原理を利用した純粋な**「物理的治療」**です。

抗がん剤や抗生剤のように「個体差によって薬が効く・効かない」という曖昧さがありません。正しいノウハウで適切に透析が行われれば、尿毒症の原因物質は理論上、必ず除去されます。

しかし大変残念なことに、動物の透析には「動物ならではの極めて特殊な技術・管理ノウハウ」が必要であり、この技術は未だ大学病院等でも十分に確立されていません。

そのため、**「大学病院や二次医療センター等他院で透析をやったのに、まったく腎臓の数値が下がらなかった」**という子が当院に転院され、私たちのノウハウで透析を行うことで、実際に数値が劇的に改善した例が多数あります。「やり方を間違えなければ、数値は必ず下がる」のです。

飼い主様へ:ただ点滴だけで引っ張らず、もう少し早い段階でご相談ください

人医療の基準で言えば、尿毒症に陥った患者に対して「点滴のみ」で治療を引き延ばすことは、医療の選択肢としてあり得ません(治療機会の逸失(医療ミス)に近い状態です)。

しかし獣医領域では透析がまだ一般的ではないため、「透析は意味がないと言われた」「選択肢自体を提示されなかった」という経緯で、当院へ来院される方の多くが「瀕死の重度尿毒症」になってから転院されてきます。

長期間、点滴のみの治療で粘ってしまったことで、来院時にはすでに腎臓以外の多臓器不全(心不全や心肺停止のリスク)を起こしているケースが少なくありません。「もう少し早い段階で透析をしてあげていれば…」と悔やまれる症例を、私は35年間で山ほど見てきました。

事前のインフォームドコンセントについて

透析治療は、急性腎不全の危機を脱したり、尿毒症の苦痛を取り除く極めて強力な手段ですが、完全に萎縮してしまった腎臓そのものを元通りに再生する魔法ではありません。(ただし猫ちゃんたちの場合透析が必要なくなるぐらいにまで改善し維持する子たちが多くいます)

そのため、「費用面」や「その後いつまで治療を継続するか」については、事前にしっかりとインフォームドコンセント(十分な説明と同意)を行い、飼い主様にご納得いただいてから治療に入ります。

尿毒症の苦しみの中でただ手をこまねくのではなく、愛する小さな家族のためにできる科学的なアプローチがここにあります。まずは、お気軽に当院までご相談ください。

次世代への希望:猫の腎不全「AIM医学」研究への協力と貢献

近年、東京大学医学部の宮崎徹教授によって、血中タンパク質「AIM(Apoptosis Inhibitor of Macrophage)」を用いた、猫の腎不全を劇的に改善させる可能性を秘めた新薬研究が進められています。

数年前、私が理事をさせていただいている学会にて宮崎教授にご講演いただいたご縁もあり、光栄なことに当院も「透析治療とAIMの関係性」について、実際の臨床研究をお手伝いさせていただきました。

その際、通常の獣医領域のコミュニティでは決して触れることのできない、人医療の最先端医学における極めて貴重な知見を共有していただきました。現段階で「腎不全が完全に治せる」というレベルにまで至るには難しいと思いますが、こうした人医療の最先端科学が、近い将来、動物医療の現場でも当たり前に行われるよう、当院も微力ながら最先端の知見を取り入れ、獣医療の発展と目の前の命に貢献していきたいと考えております。